変人達の考え事

変人(複数)が各々考えたことを書いています。

【銀河英雄伝説 野望篇】までを読み終えて。

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 気づくと毎シーズン見続けているアニメができていた。そのうちの一つが「銀河英雄伝説 Die Neue These」で、結構はまって原作も読み始めてしまった。調べてみれば今やっているのは2回目のアニメ化で、そこそこ古いタイトルで驚いた。まあ、とにかく原作は外伝を含めて全15巻の大作で、その2巻まで読み終えたので原作の感想を書いてみる。多分ネタバレはしていないはず。

 この銀河英雄伝説は非常に読みやすく、展開も比較的わかりやすい。野望篇までの段階では、ラインハルトとヤンの対立と、それぞれの陣営内での対立が描かれている。登場人物は多いものの、わかりやすく、そして惹き込まれてしまう。ただ、それ以上に正義とは何か、考えさせられてしまう。

平和とは、正義とはなにか

 主人公の一人であるヤン・ウェンリーの発言には毎回考えさせられてしまう。平和とは。正義とは。これらは一体なんなのだと。

 確かに、今世界に存在している国家は、それぞれが正当な歴史の上に立っていると主張している。そして各国は法律を作り、秩序を維持している。ただ、その秩序は絶対的に正しいとはいえないように思われてくるのだ。

 今の世界を見渡すだけでも民主制、共産制、王政を取っている国がある。その秩序は全く違うものだ。その中で、もしも誰かがAという秩序が絶対的に素晴らしく、他のものはよくない、その秩序から解放し、Aという秩序をもたらすのだ、などと言い出し、武力の行使まで始めると戦争である。

 というか銀河英雄伝説作中と殆ど変わらない。

 この作品は、銀河帝国側と自由惑星同盟という、全く異なる秩序の両方から描かれている。決してどちらが悪でどちらが善であるわけでもなくだ。どちらにもそれぞれの正義があり、それが衝突している。非常にシンプルな構造でありながら、普段生活していてはなかなか見ない構造である。だからこそ考えさせられる。

 話は戻るが、自らの考える理想を他人に押し付けだすと戦争になる。だからといってそれを完全に抑えることなどできない。なぜならば、ある理想のもとでは根絶すべきことが、別の理想では正義の実現にほかならないことがあるからだ。最終的に世界がひとつになるまでこの争いは終わり得ない。だからといって世界がひとつの秩序に収まっても、その中で不満が高まり、分裂する。やはり、平和などあり得ないのではないかと思ってしまう。

 結局のところ、われわれは恒久的な平和を目指す、などとよく言ったり主張をするが、そこにいる人間の数だけ理想も主義もあるのだから、そんなの土台無理だろう。それならば、いくつかに分裂した状態で、お互いに睨み合っている方が現実味がある。手を出さない限りは戦争状態であっても、平和があると考えられはしないだろうか。

 決して私は戦争状態がよいと主張したいわけではない。ただ、不可能な恒久平和を目指すくらいならば、無理に他の秩序と折り合わずに、威嚇しあっている方がよっぽど平和で、血も流れないのではないかと考えるにすぎない。そうは考えても実行に移せと言われたら多分無理、といってしまうような無責任な考えである。